非ソフトウェア事業で成果を上げる: コンテンツレッドグロース(Content-Led Growth:CLG)とは

目次

コンテンツレッドグロース戦略(Content-Led Growth :CLG) とは何か

コンテンツレッドグロース戦略(Content-Led Growth:CLG) とは、ホワイトペーパーなどのダウンロード資料やブログ記事、顧客の導入事例、動画などのコンテンツを戦略的に活用し、主に既存顧客に対して良好な関係を構築したり維持することに重点を置いたマーケティング手法の1つです。似たようなマーケティング戦略にコンテンツマーケティングと呼ばれるものがありますが、コンテンツマーケティングが潜在顧客への認知活動や新規リードの獲得(リードジェネレーション)、リードの醸成(リードナーチャリング)に重きが置かれているのに対し、コンテンツレッドグロースは、コンテンツを通じた顧客との関係の構築および維持に重点を置き、顧客満足度の向上促進、アップセリング(追加販売)やクロスセリング(自社が提供する別商品やサービスの販売)の推進を通じて事業の成長を目指します。これは既存の顧客への定期的なコンテンツの提供や、割引やクーポンなどの特別なオファーを通じた売上の拡大を目指すものです。


SaaS事業で発展した、プロダクトレッドグロース戦略(Product-Led Growth)という考え方

コンテンツレッドグロース戦略と類似する概念で、プロダクトレッドグロース戦略(Product-Led Growth)があります。これは、主にソフトウェアサービス事業(SaaS事業)で発展した言葉で、ソフトウェアなどの製品を通じて顧客を獲得し、維持していくマーケティング戦略のことを指します。プロダクトレッドグロースは、多くの利点を有するといわれています。まず第1に、顧客満足度を向上させることが可能です。ソフトウェアの操作性が洗練されていて、利便性が高いほど、顧客は製品を気に入り、製品が解約されてしまう可能性が低くなります。第2に、追加ライセンスの購入や周辺サービスの購入などにより、売上を向上させることができます。最後に、顧客がサポートに連絡する必要性が減少することで、既存顧客のサービスコストの削減にもつながります。

非ソフトウェア事業で活用したいコンテンツレッドグロース戦略

非ソフトウェアビジネスの場合、プロダクトレッドグロースが目指すソフトウェアの継続的な使用を通じた顧客満足度の向上や売上向上を目指すことができません。従い、コンテンツレッドグロース戦略を活用する意義がより高まるといえます。コンテンツレッドグロース戦略を検討する上でのポイントは以下のようなものです。

1.目標を設定する

コンテンツレッドグロース戦略を検討する際には、目標を設定が欠かせません。既存顧客の維持と満足度向上、売上向上に貢献するコンテンツは事業によって異なりますが、自社の顧客に見合ったコンテンツ検討と、コンテンツレッドグロースによって、何をどのくらい獲得したいのか定量的な検討の両軸が必要です。

2.価値のあるコンテンツを提供する

顧客が実際に何かを学んだり、価値を感じることができるコンテンツを作成することが重要です。情報が正確であり、明確で分かりやすく、具体的なアクションにつながるようなコンテンツが求められます。とはいえ、価値のあるコンテンツを大量に作るためには相応の労力が必要です。コンテンツをゼロから作成するのが難しい場合、既存のコンテンツを更新したり、新しい形式で再利用したりすることも有効です。例えば、ブログ記事をインフォグラフィックスのような画像やビデオに再編集したり、ホワイトペーパーなどのレポートを一連のブログ記事に分割したりすることも有効です。以下にコンテンツの一例を示します。

コンテンツレッドグロースで検討したいコンテンツの一例
  • オウンドメディア / ブログ記事:業界のトレンドやハウツー記事、製品の使い方など、既存顧客が価値を感じる情報を提供します。
  • インフォグラフィック:視覚的に情報を伝えるためのツールとして、インフォグラフィックは有効です。データや統計を分かりやすく表示します。
  • 動画コンテンツ:製品のデモンストレーション、ハウツー動画、企業の背後にあるストーリーなどを含む動画コンテンツは、視覚情報を通じた関係性の構築に役立ちます。
  • ウェビナー:業界のエキスパートを招いて行うウェブセミナーやパネルディスカッションは、顧客との深い関係性強化を生むことができます。
  • E-ブック:詳細なガイドやホワイトペーパーは、深い洞察を提供し、信頼性を高めるのに役立ちます。
  • ソーシャルメディア投稿:Facebook、Instagram、Twitterなどのプラットフォームでの投稿を通じて、ブランド理解を深め、顧客との関係を強化します。
  • ニュースレター:定期的にニュースレターを配信することで、新製品、企業ニュース、業界のトレンドなどの最新情報を顧客に提供できます。
  • UGC(ユーザージェネレーテッドコンテンツ):顧客自身が作成したコンテンツは、ブランドに対する信頼性を確立します。これには、製品のレビュー、テスト、写真、ビデオなどが含まれます。

3.さまざまな顧客接点を試し、有効な接点を探る

既存顧客に対してコンテンツを送り届ける場合、様々な手法があります。WEBサイト、Eメール、SNS、手紙やダイレクトメール、手持ちできるような冊子などが代表的です。既存顧客の特性に応じて、有効な接点を見つけていきましょう。

4.結果を確認する

コンテンツレッドグロース戦略の結果を確認していくことが大切です。WEBサイトやE-メール、SNSなどはデータ分析も容易です。手紙やダイレクトメールなど結果の確認が難しいコンテンツを利用する際には、対面や電話などの手段でフォローアップするなども有効です。

コンテンツレッドグロース戦略を活用し、既存顧客との関係性を強化しましょう

コンテンツレッドグロース戦略は、顧客の信頼とロイヤリティを獲得するための長期的な戦略です。単に商品やサービスを販売するだけではなく、顧客が成功を達成するために有益な情報を継続的に提供することが、継続的に貴社の商品やサービスが選ばれる理由となっていきます。顧客との強い関係を構築し、それらの関係を通じて成長する新しい手法を是非取り入れてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

アーチ経営サポート代表 
デジタル拡販アドバイザー / 中小企業診断士 鈴木 將路

IT業界で20年以上、統合基幹業務ソフトウェア事業(ERP事業)に関与。マーケティング責任者、自ら企画したSaaS事業の事業責任者などを担当。ソフトウェア事業開発、新規事業立ち上げ、BtoBマーケティングで20年超の経験を持つ。

現在、成長企業向けに、デジタルマーケティング支援やマーケティング研修、補助金活用サービスなどを展開中。企業経営者と目線を合わせた、きめ細やかなサービスを提供している。中小企業庁認定 経営革新等支援機関。Certified in the Prompt Engineering for ChatGPT Course at Vanderbilt University.

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