生成AI技術の進化により、企業のデジタル変革が加速する中、AIアプリ開発のニーズが高まっています。しかし、これまでは専門知識がないとAIアプリの開発は困難でした。そんな課題を解決するプラットフォームが「Dify(ディファイ)」です。この記事では、2024年最新のDify活用方法と、ビジネスでの具体的な導入ステップをご紹介します。
Difyとは?10分で分かる基礎知識
Difyは、誰でも簡単に生成AIアプリを作れるツールです。例えば、自分専用のチャットボットを作ったり、AIを使って様々な作業を自動化したりすることができます。
プログラミングの経験がなくても、画面上のボタンやメニューを操作するだけで、自分のアイデアをAIアプリにすることができます。一方、プログラミングができる人は、より詳しい設定や機能の追加もできます。
Difyの主な特徴は以下のようなものです。
- たくさんの種類のAI(ChatGPTのような対話AI)を使える
- 簡単な操作で自分だけのチャットボットが作れる
- AIに必要な情報を効率よく覚えさせることができる
- AIにいろいろな機能(計算、検索など)を追加できる
- 自分の思い通りにAIの動きを設計できる
つまり、「こんなAIアプリがあったらいいな」というアイデアを、専門的な知識がなくても実現できるツールです。最大の特徴は、プログラミング知識がなくても、ドラッグ&ドロップの操作だけでAIアプリを作成できる点にあります。ChatGPTの有償版に「GPTs」という機能がありますが、「GPTs」に近い動作を行うことができます。
Difyは、GPT-4oやClaude 3.5などの最新の大規模言語モデル(LLM)に対応しており、様々なニーズに応えることができます。基本機能は無料で利用が可能なのと、SaaS版も提供されているため、導入の敷居が低いのも魅力です。
機能は次々に拡充されており、データ管理機能の強化やセキュリティの向上など、実用性が大幅に向上しています。
Difyが注目される6つの特徴
Difyが注目される理由は、以下の6つの特徴にあります。
1.オープンソースである
Difyは、生成AIアプリケーション開発のためのオープンソースプラットフォームです。誰でも無料でアクセスでき、Webブラウザからすぐに利用を開始できる点が特徴です。オープンソースの特性を活かし、世界中の開発者がプロジェクトに貢献できるため、機能の改善やバグ修正が活発に行われています。
2.簡単に外部公開できる
Difyで開発したアプリは、URLを共有するだけで簡単に外部のユーザーへ公開することができます。特に、チャットボットやテキスト生成アプリとして作成したアプリケーションは、誰でもすぐにアクセスして利用できるようになります。ただし、URLを知っている人なら誰でもアクセスできてしまうため、機密情報を含むアプリを公開する際は注意が必要です。また、外部の有償APIサービスなどと連携している場合は、利用状況によっては費用が発生することにも注意が必要です。
3.テンプレートが充実している
Difyは、用途に応じた豊富なテンプレートを提供しており、目的に合わせて最適なものを選択できます。例えば、顧客対応用チャットボットや研修コンテンツ作成ツール、メルマガ作成ボットなど、ビジネスの様々な場面で活用できる実用的な雛形が用意されています。これらのテンプレートは、そのまま使用することも可能ですが、ドラッグ&ドロップの直感的なインターフェースにより、簡単にカスタマイズすることもできます。また、各テンプレートには必要な基本設定が予め組み込まれているため、AIやプログラミングの専門知識がなくても、すぐに実用的なAIアプリケーションを立ち上げることができます。
4.直感的に操作でき、ノーコードでフローを組み立てることができる
Difyは、直感的なユーザーインターフェースを特徴とし、プログラミングの知識がなくても誰でもAIアプリケーションを開発できるように設計されています。開発作業は全てノーコードで行うことができ、機能を持つブロックを視覚的に配置し、それらをつなぎ合わせることで複雑な処理フローを構築できます。
例えば、「開始」と「回答」の間に処理ブロックを配置し、さらに質問分類器を追加することで、ユーザーの入力に応じて処理を分岐させるような高度な機能も実装可能です。AIエンジニアでなくてもビジネスニーズに合わせたアプリケーションを効率的に開発することができます。
5.RAG(検索拡張生成)エンジンを搭載している
Difyは、RAGと呼ばれるエンジンを標準搭載しています。RAGとはRetrieval Augmented Generationの略で、日本語では検索拡張生成と呼ばれます。自社に蓄積された業務の文書やデータなどの社内情報やWEBサイトの情報などの外部情報を生成AIに利用させる技術です。DifyのRAGエンジンにより、自社の業務データや外部情報を効果的に活用したAIアプリの開発が可能になります。従来はRAGの実装には、かなり専門的な開発の知識が必要でしたが、Difyではこの機能が標準で用意されているため、誰でも簡単に利用できます。
例えば、社内の研修資料やマニュアル、業界固有のデータなどを参照情報として組み込むことで、より正確で業務に特化した回答を生成できます。これにより、一般的なAIモデルでは難しかった特定業務向けの高精度な出力が可能となり、ビジネスの固有ニーズに応えるAIアプリケーションを効率的に開発することができます。
以下の例は、事業再構築補助金という補助金の公募要領を、外部のRAGデータとしてDifyに取り込み、公募要領の内容について、gpt-4oの大規模言語モデルエンジンを利用して処理をさせるイメージです。
5.充実した分析機能を保持している
Difyは、開発したAIアプリケーションの運用状況を詳細に把握できる分析機能を備えています。専用のダッシュボードを通じて、ユーザー数やインタラクション数などの基本的な利用統計に加え、大規模言語モデルのトークン使用量といった技術的な指標まで幅広くチェックすることができます。これらのデータを活用することで、アプリケーションのパフォーマンスを客観的に評価し、改善点を特定できます。ユーザーの実際の使用状況に基づいて継続的な改善を行うことができます。
これらの特徴により、技術者でなくてもビジネスに合わせたAIアプリを短時間で開発できます。特に、RAGエンジンの搭載により、自社特有の知識やデータを活用した、高度なAIアプリの開発が可能となっています。
Difyで作れるAIアプリの4つのカテゴリーとユースケース
Difyを使って開発できるAIアプリは、以下の4つのカテゴリーに分類され、それぞれにユースケースがあります。
1.チャットボット
Difyのチャットボットは、さまざまな業界での活用が可能でです。
以下に、具体的なユースケースを3つ紹介します。
- 顧客サポートの自動化
Difyを使用することで、企業は24時間365日対応可能な顧客サポートを行うチャットボットを構築できます。顧客サポートの効率化はDifyの主要なユースケースの一つです。 - 社内向けの問い合わせシステム
Difyは社内向けの問い合わせシステムを構築する際にも有用です。企業は企業独自の情報を持つチャットボットを作成し、社員からの問い合わせに対して迅速に情報を提供できます。例えば、社内の申請手続きや社内規定についての情報を提供するチャットボットなどが考えられます。RAG機能を活用することで、社内業務の効率化が図れます。 - 教育のサポート
教育機関やオンライン学習プラットフォームでは、Difyを使った教育支援チャットボットが有効です。このボットは、生徒からの質問に対してリアルタイムで回答したり、学習教材へのリンクを提供したりできます。例えば、「英語の宿題について教えて」と尋ねると、関連する教材や解説動画へのリンクなどを提供することができます。
2.テキストジェネレーター(文字生成機能)
Difyのテキストジェネレーター(文字生成機能)は、いわゆるChatGPTのような文章生成機能を提供します。以下にそれぞれの軸に基づいた具体的なユースケースを示します。
- マーケティングコンテンツ作成
Difyを利用してブログ記事やSNS投稿を自動生成することが可能です。例えば、企業が新製品を発表する際に、Difyを使って製品の特徴や利点を強調したブログ記事を生成できます。Difyが提供するテンプレートやキーワードを基に、ターゲットオーディエンスに響く内容を迅速に作成し、SEO対策も考慮した文章も作成することができます。 - 業務文書作成
報告書やプレゼン資料の素案作成などが一例です。例えば、プロジェクトの進捗報告書を作成する際に、Difyに過去データや関連情報を基に自動的に要約を実施させ、必要な情報を整理した報告書の素案を生成できます。これにより、担当者は内容の確認と修正に注力できます。 - メール作成支援
メールの作成などのような定型業務の自動化も効果的です。例えば、顧客への定期的なフォローメールやニュースレターの作成において、Difyは事前に設定したテンプレートと顧客データを基に、受け手にチューニングされたメール文面を生成できます。
3.エージェント
Difyでは、特定のタスクを完了するためのAIエージェントを作成することができます。大規模言語モデルの高度な推論能力を活かして、複雑な作業を自律的に処理することができます。具体的には、目標の設定や作業の細分化、必要なツールの選択と実行、そしてプロセスの繰り返しを、人の介入なしで行うことができます。具体例を見てみましょう。
- 情報収集・分析
Difyは、Web上の情報を自動的に収集し、レポート化する機能を持っています。ユーザは手動で情報を探す手間を省き、必要なデータをすばやく取得できます。例えば、特定のトピックに関する最新のニュースなどを集めて、自動的に要約したレポートを生成することなどが可能です。この機能は、特に市場調査や競合分析などで有用です。 - 画像生成AIや音声生成AIとの連携
Dall-Eなどの画像生成AIや、whisperのようなText-to-Speech AIと連携することができ、テキストのプロンプトから画像や音声を生成することができます。 - 複合したタスクの処理
Difyは複数のAPIを組み合わせて高度な処理を行うことができます。異なるサービスやデータソースから情報を連携するなど、一連のプロセスを自動化できます。例えば、あるAPIからデータを取得し、それを別のAPIで処理した後、その結果をレポートとしてまとめるといった流れを作れます。
4.ワークフロー
Difyのワークフローは、自動化や一括のバッチ処理などに向いています。主な用途として、高品質な翻訳、データ分析、コンテンツ作成、メール生成の自動化などがあり、特に大量の処理が必要な業務に適しています。
- 大量処理
例えば、毎日の在庫データをCSV形式で収集後、自動的に分析しその結果を報告書として生成するようなワークフローを組むことができます。 - 外部ツール連携
Google検索や翻訳ツールなどと連携させることができ、ワークフローに組み込むことができます。
Difyの導入方法
Difyを企業で効果的に活用するための具体的な導入方法をご紹介します。
1.Difyの公式サイトから利用する方法
Difyの公式サイトでは、SaaS形式でDifyを利用することができます。サーバーの知識などが不要で、クラウド経由で即時利用が可能です。ただし、データの保管場所などは選べません。無料で試すことができますが、使用回数の制限があるため、継続利用のためには費用が必要です。
2.自ら契約するサーバーやパソコンなどのローカル環境へ導入する方法
Difyはオープンソースのソフトウェアとして提供されているため、知識があれば自ら契約するサーバーやパソコンなどのローカル環境などへ導入することが可能です。具体的には、GitHubからリポジトリをクローンし、Dockerを使用してローカル環境にセットアップすることができます。セキュリティ面や独自データの管理など全て自分でカスタマイズすることもできますが、構築には専門知識が必要になります。
3.クラウド環境を利用する方法
Difyを、AWSなどのクラウド環境やエックスサーバーのVPS(仮想専用サーバー)上で運用する方法があります。エックスサーバーVPS環境では、月額利用料を支払うとDifyを利用していくことができます。
アーチ経営サポートではDify導入をサポートしています。
アーチ経営では生成AIコンサルティングを提供しています。Difyの導入でお困りの点がありましたら遠慮なくお問い合わせください。