
令和7年度(2025年度)業務改善助成金の制度概要
事業場の最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資を行う中小企業・小規模事業者向けの「業務改善助成金」。令和7年度(2025年度)の制度概要、対象者、申請方法、そしてPCや自動車も対象になる特例について詳しく解説します。
この記事でわかること
- 業務改善助成金(令和7年度)の概要
- 対象となる事業者と要件
- 申請期間と賃金引き上げのタイミング
- 助成される金額と助成率
- 対象となる設備投資(PC・自動車の特例も!)
- 申請から受給までの流れ
- 賃金引き上げの注意点
- 令和6年度からの変更点
「設備投資をしたいけど資金が…」「最低賃金引き上げに対応したい」そんな中小企業・小規模事業者の皆様へ朗報です!
PCや自動車の購入にも使える可能性がある「業務改善助成金」。最大600万円が助成されるこの制度について、令和7年度の最新情報をまとめました。
業務改善助成金とは? (令和7年度の概要)
業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、同時に生産性向上に役立つ設備投資(機械設備、POSシステム、自動車の導入など)を行った場合に、その設備投資費用の一部を助成する制度です。
主なポイント
- 助成上限額:最大600万円
- 助成率:事業場内最低賃金の金額に応じて 3/4 または 4/5
- 申請単位:事業場ごとに行い、年度内に1回まで
誰が対象? (対象事業者と申請単位)
この助成金の対象となるのは、以下の要件を満たす事業者です。
- 中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
- 解雇、賃金引き下げ等の不交付事由がないこと
注意:大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となります。申請は、本社・支店など、事業場ごとに行います。
申請期限と賃金引き上げの期間(令和7年度)
令和7年度の申請期間等は以下の通りです。
申請期間 | 賃金引き上げ期間 | 事業完了期限 | |
第1期 | 令和7年4月14日~ 令和7年6月13日 | 令和7年5月1日~ 令和7年6月30日 | 令和8年1月31日 |
第2期 | 令和7年6月14日~ 申請事業場に適用される 地域別最低賃金改定日の前日 | 令和7年7月1日~ 申請事業場に適用される 地域別最低賃金改定日の前日 | 令和8年1月31日 |
ポイント:賃金引上げは、申請期間に対応した期間内に行う必要があります。
いくらもらえる? (助成率と助成額)
助成される金額は、賃金の引き上げ額と、引き上げる労働者の数によって変わります。
助成率
事業場内最低賃金の金額によって、以下のいずれかの助成率が適用されます。
- 1,000円未満:4/5
- 1,000円以上:3/4
助成上限額(コース別)
賃金の引き上げ額に応じてコースが分かれており、さらに引き上げる労働者数によって助成上限額が決まります。
コース区分 (事業場内最低賃金の 引き上げ額) | 引き上げる 労働者数 | 事業場規模 30人未満 | 事業場規模 30人以上 |
---|---|---|---|
30円コース (30円以上) | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2~3人 | 50万円 | 90万円 | |
4~6人 | 70万円 | 100万円 | |
7人以上 | 100万円 | 120万円 | |
10人以上* | 120万円 | 130万円 | |
45円コース (45円以上) | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | |
4~6人 | 100万円 | 140万円 | |
7人以上 | 150万円 | 160万円 | |
10人以上* | 180万円 | 180万円 | |
60円コース (60円以上) | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | |
4~6人 | 150万円 | 190万円 | |
7人以上 | 230万円 | 230万円 | |
10人以上* | 300万円 | 300万円 | |
90円コース (90円以上) | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | |
4~6人 | 270万円 | 290万円 | |
7人以上 | 450万円 | 450万円 | |
10人以上* | 600万円 | 600万円 |
助成上限額一覧(*10人以上の増額区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合に適用)
このように、最大で600万円の助成を受けることが可能です。
何に使える? (対象となる設備投資)
助成の対象となるのは、生産性向上に役立つ設備投資です。具体例としては以下のようなものが挙げられます。
経費区分 | 対象経費の例 |
---|---|
機器・設備の導入 | POSレジシステム導入による在庫管理の短縮リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮 |
経営コンサルティング | 国家資格者による、顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し |
その他 | 顧客管理情報のシステム化 |
【注目】PC・自動車も対象になる「特例事業者」とは?
通常、PCや一般的な自動車は助成対象外ですが、「特例事業者」に該当する場合は、これらも助成対象経費として認められる可能性があります。
特例事業者の要件
以下の両方の要件を満たす事業者は、特例事業者となります。
- 賃金要件:申請事業場の事業場内最低賃金が1,000円未満であること
- 物価高騰等要件:原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が前年同月に比べて3%ポイント以上低下していること
特例事業者の助成対象経費の拡充
特例事業者に該当する場合、通常の設備投資に加えて、以下の経費も助成対象となります。
- 定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車
- PC、スマホ、タブレット等の端末と周辺機器の新規導入(注意:PC等は新規導入に限ります)
これにより、業務に必要なPCの導入や、送迎・運搬用の自動車購入費用の一部も助成される可能性があります。これは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
賃金引き上げの注意点
助成金の活用にあたり、賃金の引き上げには以下の点にご注意ください。
賃金引き上げの注意点
- 地域別最低賃金の発効との関係: 地域別最低賃金の発効日に合わせて事業場内最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げる必要があります。
- 就業規則等への記載: 引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定める必要があります。
- 分割引き上げは不可: 複数回に分けて事業場内最低賃金を引き上げることは認められません。
申請から受給までの流れ
助成金は以下の流れで支給されます。
- 交付申請: 交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出します。
- 交付決定: 労働局で審査が行われ、交付が決定されると通知が届きます。
- 事業の実施: 交付決定後、計画に沿って賃金の引き上げ、設備の導入、代金の支払い等を行います。(重要:交付決定前に実施したものは対象外です)
- 事業実績報告: 事業完了後、事業実績報告書等を労働局に提出します。
- 交付額確定・助成金支払い: 報告書が審査され、適正と認められれば助成金額が確定し、支払いが行われます。
- 助成金受領: 指定した口座に助成金が振り込まれます。
注意:助成金は後払いです。先に設備投資費用や賃金の支払いを行う必要があります。
令和6年度からの主な変更点
令和7年度の業務改善助成金は、令和6年度から以下の点が変更されています。
- 事業主単位での申請上限が600万円までに変更されました。
- 大企業と密接な関係を有する企業(みなし大企業)は対象外となりました。
- 基準となる事業場内最低賃金労働者の雇用期間が「3か月以上」から「6か月以上」に延長されました。
- 事業完了期限が2026(令和8)年1月31日に変更されました。
まとめ
業務改善助成金は、賃上げと生産性向上を同時に実現したい中小企業・小規模事業者にとって、非常に有効な支援策です。特に、特例事業者になればPCや自動車も対象となるため、活用の幅が広がります。申請には計画書の作成など準備が必要です。対象となりそうな事業者様は、早めに詳細を確認し、準備を進めることをお勧めします。最新の情報や詳細な要件については、厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。
この記事が、皆様の事業発展の一助となれば幸いです。