Gemini Deep Researchの登場
Googleの提供するAI、Google Geminiは2023年12月に発表され、その後も継続的に進化しています。2024年12月には、有償版のGeminiであるGemini Advancedに「Gemini Deep Research(ディープリサーチ)」と呼ばれる機能が追加されました。 Gemini Deep Researchは、Geminiの高度なAI能力を活用し、複雑なトピックを深く掘り下げて調査し、包括的なレポートを作成してくれるAIリサーチアシスタントで、 従来のネット検索を置き換えるインパクトがあります。
本記事では、Gemini Deep Researchの機能、利点、マーケティングリサーチ効率化の観点からの利用ケースなどを解説します。
Gemini Deep Researchとは?
Gemini Deep Researchは、Gemini Advancedに搭載されたAIリサーチアシスタントです。 ユーザーが質問やトピックを入力すると、Gemini Deep Researchは自動的にウェブ上の膨大な情報源から関連情報を収集し、分析、整理して、分かりやすいレポートにまとめてくれます。
Google Geminiは、自身をウェブ上に送り込み、プロンプトに基づいて情報を収集するという、画期的な機能を備えています。 従来のリサーチでは、ユーザー自身が検索エンジンで情報を探し、複数のサイトを読み比べて内容を整理する必要がありました。Gemini Deep Researchは、このプロセスを自動化することで、ユーザーの負担を軽減し、リサーチにかかる時間を大幅に短縮します。
Gemini Deep Researchの機能と利点
Gemini Deep Researchは、以下の機能と利点により、ユーザーのリサーチ活動を強力に支援します。
- 包括的なレポートが作成できる
Gemini Deep Researchは、ウェブ上の様々な情報源から関連情報を収集し、多角的な視点から分析したレポートを作成します。レポートは、見出しや箇条書きなどを用いて整理され、読みやすくなっています。また、引用元へのリンクも含まれているため、情報の信頼性を確認することも可能です。 - リサーチ時間が大幅に短縮できる
Gemini Deep Researchは、AIが自動的に情報収集と分析を行うため、ユーザー自身が行う場合に比べてリサーチにかかる時間を大幅に短縮できます。迅速な情報収集が必要なマーケターにとって大きなメリットとなります。 - 多様な情報源へのアクセス
Gemini Deep Researchは、Googleの検索機能とGeminiのAI推論能力を組み合わせることで、WebサイトやYoutube上の膨大な情報源にアクセスし、多様な情報を収集、整理することができます。200万トークンのコンテキストウィンドウにより、大量のテキストデータを処理することができ、複雑で深いリサーチを可能にします。 - リサーチプランの編集
Gemini Deep Researchは、ユーザーの質問に基づいてリサーチプランを作成しますが、ユーザーはこのプランを編集することができます。例えば、特定の情報源を優先したり、逆に除外したりすることが可能です。これにより、ユーザーは自身のニーズに合わせてリサーチの方向性を調整することができます。 - Google Docsへのエクスポート
Gemini Deep Researchで作成されたレポートは、Google Docsにエクスポートすることができます。これにより、レポートの内容をさらに編集したり、他のユーザーと共有したりすることが容易になります。
Gemini Deep Researchの利用方法
Gemini Deep Researchの利用方法を説明します。
1.Gemini Deep Researchに指示を与える(プロンプト)
今回の例ではBtoBマーケティングの始め方について調査していきます。基本的にはGeminiへ指示を与えると、Gemini Deep Researchが自動で調査を行います。ここでは以下の要素を伝えています。
- 目的を伝える:例)BtoBマーケティングの始め方について、網羅的に整理してください。
- 参照先を伝える:英語と日本語のサイトを中心に調査を指示しています。
- 出力形式を伝える:施策を表形式で出力させています。
- 説明方式を伝える:順を追って説明するように伝えています。
2.Gemini Deep Researchからリサーチ計画が提示される
Gemini Deep Researchがプロンプトの内容を理解し、リサーチ計画が提示されます。提示内容に不必要なプロセスや追加したい内容があれば手動で編集ができます。実際には以下のような計画が提示されました。
BtoBマーケティング戦略ガイド
ウェブサイトをリサーチ
BtoBマーケティングの始め方について網羅的に整理してください。
英語、日本語のサイトを参照します。
施策を表形式でまとめてください。
ステップバイステップで説明してください。
(1) BtoBマーケティングの定義と目的を明確化してください。
(2) ターゲット顧客を特定し、ペルソナを作成してください。
(3) 顧客の抱える課題とニーズを分析してください。
(4) 競合他社の分析を行い、自社の強みと弱みを把握してください。
(5) マーケティング目標を設定し、KPIを決定してください。
(6) 適切なマーケティングチャネルを選択してください。
(7) コンテンツマーケティング、SEO、ソーシャルメディアマーケティングなど、具体的な施策を検討し、表形式でまとめてください。
(8) 施策の実施計画を立て、予算とスケジュールを管理してください。
(9) 効果測定を行い、PDCAサイクルを回して改善を続けてください。
**表形式での施策例** | 施策 | 説明 | メリット | デメリット | |—|—|—|—| | コンテンツマーケティング | ブログ記事、ホワイトペーパー、ケーススタディなど、顧客にとって有益なコンテンツを作成・配信する。 | 顧客との信頼関係を構築できる。SEO効果も期待できる。 | コンテンツ作成に時間と費用がかかる。 | | SEO | 検索エンジン最適化を行い、ウェブサイトへのトラフィックを増やす。 | ウェブサイトへのアクセスを増やし、リード獲得につなげることができる。 | 効果が出るまでに時間がかかる。専門知識が必要な場合がある。 | | ソーシャルメディアマーケティング | Facebook、Twitter、LinkedInなどのソーシャルメディアを活用して、顧客とコミュニケーションをとる。 | 顧客とのエンゲージメントを高めることができる。ブランド認知度向上に繋がる。 | 炎上などのリスクがある。運用に手間がかかる。 | | メールマーケティング | 顧客にメールマガジンなどを配信して、情報を提供する。 | 顧客とのOne to Oneコミュニケーションが可能。 | スパムメールとみなされる可能性がある。 | | イベントマーケティング | セミナーや展示会などを開催して、顧客と直接接点を持ち、リードを獲得する。 | 顧客との信頼関係を構築できる。リード獲得効率が高い。 | イベント開催に費用がかかる。 | | 広告 | オンライン広告やオフライン広告を出稿して、顧客にアプローチする。 | 広告予算に応じて、リーチする顧客層をコントロールできる。 | 広告費用が高額になる場合がある。 |
**ステップバイステップでの説明**
1. **準備段階:** BtoBマーケティングの基礎知識を習得し、自社の現状を分析する。
2. **戦略策定:** ターゲット顧客、マーケティング目標、KPIなどを設定する。
3. **施策の実施:** コンテンツマーケティング、SEO、ソーシャルメディアマーケティングなど、具体的な施策を実行する。
4. **効果測定と改善:** 施策の効果を測定し、PDCAサイクルを回して改善を続けていく。
3.Gemini Deep Researchがリサーチを実行する
実行計画に基づき、Gemini Deep Researchがリサーチを実行します。今回は自動で83件のWEBサイトを調査しているようです。人間が人手で行うには難しいレベルの調査を一気に実行しているのがわかります。
4.Gemini Deep Researchから調査結果が表示される
しばらく時間を置くと、Gemini Deep Researchから引用元の情報とともに調査結果が表示されます。Googleドキュメントで開くことができるため、共有も自由に行えます。
最初に施策を表形式にまとめてという指示を出しましたが、表形式でまとめられていました。
このように、従来の検索よりも、網羅的で多面的な調査が行える点がGemini Deep Researchの特徴です。
Gemini Deep Researchの始め方
Gemini Deep Researchを始めるには、Gemini Advancedの契約が必要です。月額20ドルのサブスクリプション料金でGemini Deep Researchを含むGemini Advancedのすべての機能が利用できます。
1.GeminiのWebサイトにアクセスする
Webブラウザでgemini.google.comにアクセスします。 このとき、Googleアカウントでログインしていない場合は、ログインします。
2.Gemini Deep Researchを選択する
ページ上部のメニューから「Gemini Advanced」をクリックし、ドロップダウンメニューから「1.5 Pro with Deep Research」を選択します。
BtoBマーケティングで行われる代表的なリサーチとGemini Deep Researchの適用度
BtoBマーケティングでは様々な調査が行われますが、Gemini Deep Researchではオンライン上の情報を網羅的に調査できるため、オンラインで完結する情報収集に適しています。例えば以下のような調査業務での活用が期待できます。
リサーチ業務 | 目的 | 効果 | 調査方法例 | 注意点・落とし穴 | Deep Researchの適用度 |
---|---|---|---|---|---|
市場調査 | 市場規模、成長性、競合状況、トレンドなどを把握する | ターゲット市場の選定、マーケティング戦略の立案、新規事業の創出 | 業界レポートの購読、市場統計データの分析、競合他社のWebサイト分析、顧客・見込み客へのインタビュー、アンケート調査 | 情報の鮮度、信頼性の確認、市場の定義 | ◎業界動向や競合他社の分析に活用できる |
顧客調査 | 顧客のニーズ、課題、購買行動、満足度、属性などを把握する | 商品・サービス開発、顧客満足度向上、新規顧客獲得、顧客ロイヤリティ向上、アップセル・クロスセル | アンケート調査、顧客インタビュー、デプスインタビュー、Webサイト行動分析、顧客データベース分析、フォーカスグループインタビュー | 回答者の偏り、質問の設計、顧客セグメンテーション | △一部適用できるが、やや不向きである |
競合調査 | 競合他社の製品・サービス、価格、販売チャネル、マーケティング戦略、強み・弱みなどを把握する | 競争優位性の確保、差別化戦略の立案、価格戦略の策定、新製品・サービス開発 | 競合他社のWebサイト分析、製品・サービスの利用、競合他社の顧客インタビュー、競合他社の広報資料・IR資料の分析、特許情報の調査 | 情報収集の倫理、分析の客観性、競合の定義 | ◎競合他社の分析に活用できる |
トレンド調査 | 最新の技術動向、市場トレンド、社会変化、法規制などを把握する | 新規事業の創出、既存事業の改善、リスクヘッジ、イノベーションの促進 | 業界誌・専門誌の購読、学会・展示会への参加、専門家へのインタビュー、ニュースサイト・ブログ記事のチェック、政府機関・業界団体発行のレポート | 情報の取捨選択、将来予測の難しさ、トレンドの解釈 | ◎トレンド調査に活用できる |
販売チャネル調査 | 各販売チャネルの特性、効果、費用対効果などを把握する | 最適な販売チャネルの選択、販売チャネル戦略の最適化 | 各販売チャネルの売上データ分析、顧客アンケート、販売パートナーへのヒアリング | チャネル間の相乗効果、チャネルの変化 | △一部適用できるが、やや不向きである |
ブランドイメージ調査 | 顧客が自社ブランドに対して抱いているイメージを把握する | ブランド戦略の立案、ブランド価値向上 | アンケート調査、インタビュー調査、ソーシャルメディア分析 | 回答者の属性、質問の設計 | △不向きである |
Gemini Deep Researchの注意事項
Gemini Deep Researchは非常に強力なツールですが、いくつかの注意事項も存在します。以下のような点に注意して利用すると良いでしょう。
- バイアスがかかっていることに留意する
Gemini Deep Researchは、ウェブ上の情報に基づいてレポートを作成するため、情報源にバイアスが含まれている可能性があります。利用する場合には、Gemini Deep Researchが提供する情報が常に客観的であるとは限らないことに注意が必要です。 - ハルシネーションに注意する
Gemini Deep Researchは、事実と異なる情報や存在しない情報を生成してしまう「ハルシネーション」を起こす可能性があります。そのため、情報の真偽については利用者自身が慎重に確認する必要があります。 - 人間の分析が必要
Gemini Deep Researchは、AIによって自動的にレポートを作成しますが、人間の分析能力を完全に代替できるわけではありません。利用者は、Deep Researchが作成したレポートを冷静に読み解き、必要に応じて追加の調査を行うようにしましょう。
Gemini Deep Researchを活用しよう
Gemini Deep Researchは、高度なAI技術を活用した新しいリサーチアシスタントです。 従来のリサーチでは、利用者自身が検索エンジンで情報を探し、複数のサイトを読み比べて内容を整理する必要がありました。Gemini Deep Researchは、このプロセスを自動化することで、利用者の負担を軽減し、リサーチにかかる時間を大幅に短縮します。 AI技術がリサーチ活動にどのように貢献できるかを示す好例と言えるでしょう。 ぜひ積極的に活用してみましょう。
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